top of page

シマフクロウはどれくらいの数、住めるのか?

 シマフクロウが、北海道においてどの程度の数まで生息することができるのか、よく話題になります。

 シマフクロウは絶滅寸前の1990年代には30-40地点まで生息地が減りましたが、2022年に100地点・200羽まで回復したことが確認されています。ただし分布は道東に偏っています。

 北海道が森に覆われていた開拓期以前(江戸時代)の生息数について、私(竹中)は以前の研究で、過去全道に分布していたと仮定し、近年の高密度地域の数値を当てはめて、551~642地点の生息地があっただろうと推定したことがあります。

 現在は平地部分が都市や農地に転換され森林面積が大幅に減り、各地の河川の自然度が下がったので、過去の状態に戻すことは不可能です。それでも、北海道にはまだ広い森林帯があり、道北、道央、道南には生息地がほぼ無いことから、これらの地域にまで分布が広がれば、現在の2倍、200地点・400羽程度の生息は可能だと、個人的に考えています(なお、シマフクロウは200km以上分散する個体がいることがわかっています)。もちろん、好適な生息環境があることが前提ですが。

 思い返せば、1999年に環境省の専門委員会で「アクションプラン」という保護目標を策定したのですが、将来の「当面の」目標数を、当時の約2倍の100つがい・200羽としました。藤巻先生が「わかりやすいからこれで行こう!」と会議で仰ったことを思い出します。25年かけてシマフクロウが自ら分散拡大を行い、生息数がその状態に達したわけで、これまでの保護の道のりを思うと感慨深いものがあります。

 2016年に環境省と専門家会議では、新たな目標として「知床・根釧・大雪・日高の既存の各地域個体群が24つがい以上になること」を据えました。一部の地域ではすでにこの数値を越えていますが、この目標には道北や道央、道南地域を含んでいません。

 これらの目標に加え、これから先の保護には、数的なものも重要ですが、「道内全域にシマフクロウが自然に住む状態に導く」、という状態目標が重要だと考えています。一度いなくなった地域にシマフクロウを呼び戻すためには、生息環境の整備、再生が重要であることは言うまでもありません。その成果が「シマフクロウが何羽住めるか」に関わってくるのです。

 現在は繁殖つがいの母数が以前より多くなっていることから、増加のスピードはこれまでより速まると考えられます。安定多数に達するまで、もうしばらく保護の手を緩めず、全道にシマフクロウが住める状態に戻して行きたいと思っています。

(解説:竹中)

bottom of page