
🦉質問にお答えします🦉-ロシアのシマフクロウ-
- くまこ。

- 5 日前
- 読了時間: 4分
朝起きると霜が降りて、一面真っ白。森はキラキラ輝いて眩しいほどです。
さて、今回もシマフクロウ基金のシンポジウムにおいて参加された皆様よりいただいた質問に理事がお答えします。
今回の回答者は竹中理事です。
大陸側のシマフクロウについての質問にまとめてお答えいただきました🦉
Q:
・大陸の生息地では1つの川に複数つがいが繁殖しているとのことでしたが、上流~下流で生息のしやすさなど違いはありますか。
・北海道では1河川に1つがいのイメージだが環境に違いはありますか。
A:
私は1996年に藤巻先生に連れられて初めてロシアを訪問して以降、ロシアの研究グループとシマフクロウ生息地を調査してきました。

主な調査地は北海道と日本海を挟んだロシア沿海地方、シホテアリン山脈の東麓地域です(稚内-わっかない、と同緯度付近)。

調査の初期はまだ山脈を移動する道も十分に整備されておらず自然が豊かに残っていました。

この地域は植物や魚類、生物の多くが北海道と共通し(北海道生態系の起源でもあるので)、見慣れた樹木の大木が生い茂り、川にはオショロコマやヤマメが群れる森林河川は、かつての北海道の姿をほうふつとさせました(トラやイノシシもいますが)。

主な踏査は平地部分で行い、流域面積や地形的には、知床半島付け根の斜里、標津の景観、十勝平野南部の感じでしょうか。山奥の水源から河口まで数十キロという規模感で、流域のほとんどは森林に覆われており、河口部に集落と農地がわずかにあるという地域でした。下流域の生息地は湿原交じりの環境で河川の底質は砂礫、河口から10㎞程度で段丘の発達する河畔林が広がる森林帯になり河川は礫底になります。

冬の気温は北海道以下で川幅の広い川は車が走れるほどに凍結しますが、段丘からの湧水や、少雪で晴れる日が多いためか小さい支流はあちこち未凍結部分がありました。雪解けは北海道より早い印象です。
調査エリアには多数のシマフクロウ(亜種)が生息していました。それぞれのつがいが約5~8㎞おきに連続して縄張りを形成して生息している状況でした。
河川魚の多くは北海道と同じ遡上回遊性のサケ科魚類、そして樹洞大木はあちこちにあり(実際、樹洞木が多くどれが巣かわからない場所もあった)シマフクロウはどこにでもいる状態だったので、それぞれの環境に合わせて採餌行動を行っていたと考えられます。
北海道は「平野部分が開拓されてきた」ため、シマフクロウの生息地はどうしても山地の森林帯に押し込められています。
しかしかつては、ロシアのように本来の自然環境では平野部にも生息域があったため、ひとつの流域にはその流域規模感に応じて多数のシマフクロウが生息していたと考えられます。

北海道ではこれまでの観察や研究で、孤立傾向にあるつがいの縄張りは河川沿い10㎞以上に及びますが、生息密度が高い地域はそれより縄張りは小さくなっています。生息密度が高いことはすなわちその河川での餌-魚類環境が良いということになります(自然採餌地点では)。
北海道でも徐々に生息数が増えてきていますが、いつかまたかつてのように多数のシマフクロウがあちらこちらで普通に生息し、毎夜鳴き交わしている状況に持っていきたいなと考えています。
藤巻先生にはロシア調査のきっかけを頂いたことを大変感謝しております。北海道の原風景-シマフクロウ生息環境保護のターゲット、を具体的にイメージできたことが今の自分のシマフクロウ保護につながっていると思います。2000年前後のロシアのシマフクロウ生息地、人の手のほとんど入っていない森林を何度も踏査できたのは貴重な経験でした。

いっぽう、そのロシア沿海地方では、2000年代から急速に森林伐採が進み、瞬く間に雄大な森林景観が失われていきました。ソビエト崩壊後に経済開放したロシアが、木材需要という世界経済の波に後先考えずに乗ってしまったためです。最後に訪問した2015年以降どうなっているのか、シマフクロウも相当影響を受けているに違いありません。心配ですが今の国際情勢では見にも行けず、悶々たる思いをしています。
参考:
ロシアにおけるシマフクロウの生息環境調査と日本の保護への応用
プロ・ナトゥーラ・ファンド第11期助成報告書(2002)P29-38
今後も皆様より寄せられた質問に、シマフクロウ保護活動最前線で活動する理事たちに回答していただきます。お楽しみ、、🦉✨
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